Leader’s Pick Up ~レベル3ジャッジ 牧野 充典~
マジックのイベントにおいて“ジャッジ”は非常に重要な役割を担っています。
30年間蓄積されたルール規定をもとにイベントの運営を行い、ときには違反を犯したプレイヤーへ厳しい裁定をくだすこともあるでしょう。
ジャッジにはレベル1~3の3クラスが存在します。
数字が大きくなるにつれて求められる知識、与えられる権限も大きくなります。
特にレベル3になると、日本にわずか5人しかいません。
牧野充典(マキノミツノリ)さんはレベル3ジャッジのひとり。
2021年に晴れる屋へ入社し、数々のイベントへ携わっています。
今回のインタビューでは牧野さんにジャッジの魅力や晴れる屋でジャッジを行うメリットを語っていただきました。
ジャッジへの憧れ
――本日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をお願いします。
晴れる屋イベント統括でレベル3ジャッジの牧野です。
主に全国の晴れる屋イベントを監修したり、神決定戦や『チャンピオンズカップ予選』などの重要イベントの運営責任を担っています。
そのほか、国内最高峰イベント『チャンピオンズカップ ファイナル』ではヘッドジャッジを務めています。
全世界のジャッジを統括する組織『Judge Academy』の前身『Magic Judge Program』では日韓の地域コーディネーター(国内ジャッジの代表的ポジション)として様々な仕事をしていました。
――凄まじい経歴をもつ牧野さんですが、マジックに触れたのはいつからでしょうか?
僕がマジックを始めたのは中学3年生の時でした。ちょうど日本語版が発売される直前だったかな。お店で売っているのを見かけて、友達と遊ぶようになりました。
住んでいたのが札幌の隣の小さな町で、取り扱っているお店にはデュエルスペースなんてありませんし、イベントも存在しません。
だから仲間うちで遊ぶときにルールトラブルが起きたときは、僕がジャッジの役割をこなしていました。
それからしばらくして札幌に遠征しイベントに参加したんですが、そこで活動していたジャッジのみなさんがすごくカッコよく見えたんです。
ちなみにそのイベントは進藤さん(※)の東京に旅立つ前の最後の主催イベントでした。
(※)進藤欣也氏は元レベル3ジャッジであり、マジックの日本語訳も担当していた。
影響を受けた僕は「自分でもこんなイベントを主催したい!」と思い、地元のコミュニティセンターを借りて定期的にイベントを開催するようになりました。
参加者が集まるようにビラを作ってデュエルスペースに貼ってもらったり、コミュニティで宣伝したり……30人くらいは毎回集まってくれましたね。
――牧野さんのジャッジのルーツですね。資格を習得されたのはどのタイミングでしたか?
資格の話をされたのは高校3年生の時です。ところが
「牧野さん高校生だったの!?ごめん!!」……と。どうやら高校生だと取れないらしく、卒業した年の夏に習得しました(笑)
そのときはレベル2で認定されたんですが、ちょうどシステム変更のタイミングで結局レベル1での習得になり、気づいたら2になってましたね。
だけど途中ジャッジから離れた時期があって、2006年にレベル1を再習得、2008年にレベル3を習得しています。
――再習得からわずか2年で……!レベル3を習得しようと思ったきっかけは何でしたか?
復帰してから公式に活動を評価いただき、プロツアーのジャッジも任せてもらうようになりました。
当時も日本人プレイヤーは活躍していたんですが、国内での認知度は極めて低かった。
それを課題に感じていて、どうすれば解決するかを考えた結果、「自分がレベル3ジャッジになって国内のマジックイベントを盛り上げる」という結論に至りました。
レベル2とレベル3の違い
――レベル3ならそれが可能だと?
はい。レベル3ジャッジはレベル1~2と大きく異なる点があります。それは“求められる視野“です。
レベル2以下は自分が担当するイベントやコミュニティをより良いものにしていく役割が求められます。
レベル3になると一気に視野が広がり、日本全体のマジックコミュニティの代表として“社会におけるマジックの地位向上”がミッションとなります。
――見る範囲がマジックコミュニティから日本社会全体へと一気にジャンプしましたね……!レベル3になった牧野さんはどのような取り組みをされたのでしょうか?
ジャッジの評価制度を整備し、日頃頑張っている人にしっかり報酬が行き渡るようにしました。
当時ジャッジとして評価されるのはトーナメントシーンのみ。「(日常で)プレイヤーにルールを教える」、「頻出裁定集を作る」などの活動は残念ながら評価されていませんでした。
しかしそんな状況であっても、マジック発展のためボランティア的な立場で上記の活動をされている方がたくさんいました。
「この人たちがどうすればもっと評価されるだろうか?」
自分にできることを考えた結果、ジャッジプログラムのひとつ「イグゼンプラープログラム(内部報奨制度)」の整備と推進を行いました。
このプログラムを活発的に利用してもらうことで、ジャッジコミュニティに対して貢献された方には、他のジャッジから推薦メッセージとプロモカードが届きます。
それらはジャッジ活動のモチベーションとなり、ジャッジコミュニティはより活発に、新規ジャッジもたくさん増えました。
僕が地域コーディネーターに就任する前は国内のジャッジは100名を下回っていたのが、コーディネーターを辞めるタイミングでは500名を上回っています。
ジャッジの魅力
――現在も多くのジャッジが国内で活躍されていますが、牧野さんにとってジャッジの魅力とは?
女の子にモテます!!
――そうなんですか!?
というのは半分冗談で、ジャッジ業務をこなすことで様々な対人スキルが身につき、結果的に人望が集まる=モテるといえるんじゃないでしょうか。
例えば相手が何を伝えたい内容を読み取る力。
ジャッジコールで呼ばれた時、盤面を見ただけで瞬時にどんなトラブルが起きたかを把握するのは不可能です。そこで質問をしつつトラブルの原因を探り、ルールをもとに解決案を導き出します。
もちろん質問内容と解決案を正しく伝えるための情報伝達能力も欠かせません。
これらのスキルは一朝一夕で身につくものではなく、何度も対応を繰り返すことで少しずつ上達していきます。
その機会がたくさん与えられるのはジャッジの魅力だと思います。
――確かに、日常ではそう得られない経験ですね。では逆に、ジャッジ業務をこなすうえで辛いことはありますか?
正直僕はジャッジ関連で辛いと思ったことがないんですよね。
ただ人によってはルール文章を読み込むのが苦痛に感じたり、間違った裁定を出してしまって気に病んだりすることがあります。
でも人間は完璧な存在ではないし、間違えるときは間違えます。
仮に間違ったとしてもプレイヤーはヘッドジャッジへ上告する権利をもっていますし、晴れる屋には相談ホットラインがあって僕をはじめ全国のジャッジがカバーしています。
ジャッジを長く続けるコツは”気にしないこと”。自分ができないことを数えるよりもできることを数えましょう。
晴れる屋でジャッジを行うメリット
――晴れる屋には多くのジャッジスタッフが在籍しています。晴れる屋でジャッジを行うセールスポイントを教えてください。
開催されるイベント数が晴れる屋以外の店舗と桁違いに多いので、その分成長スピードが速いです。
晴れる屋以外のジャッジがイベントに携わる場合、土日に1イベントというパターンがほとんど。
一方で晴れる屋のジャッジは毎日イベントが開催されているうえに同時に複数のイベントを回さなければならないので、嫌でも対応力が身につきます。
以前とある店舗のジャッジスタッフがチャンピオンズカップ予選のヘッドジャッジを務めたんですが、そのスタッフに「(ヘッドジャッジより)普段のイベントを回している方が楽しい」と言われました。
大変だけど、それだけやりがいのある仕事なんだと思います。
あ、超重要なメリットを忘れていました。世界最高レベルの裁定の考え方を僕から学べます!(笑)
――それは非常に大きなメリットですね(笑)
牧野さんはどんな人がジャッジに向いていると思いますか?
端的に言うと教えたがりな人です。
ルールがわからなくて困っている人がいたら助けてあげたい。トラブルが起きたら力になりたい。他の人が持っていない知識を得るのが楽しい。
あとはうまい人のプレイをじっくり見たい人もオススメです。ジャッジはいい試合を目撃する機会がたくさんあるので。
――余談になりますが、うまい人とはどういうプレイをする人ですか?
僕は自分にとっての最適プレイから大きく外れずに、相手がこっちの裏目を気にしてミスさせるような人を見ると「うまいな~」と思います。
リミテッドがわかりやすいですね。膠着した盤面で相手が突然フルアタックをしてきたら「何かあるに違いない」と警戒するじゃないですか。
実は適切にブロックをされても損しなくて、ワンチャン相手が持っていない呪文をケアしてミスしてくれるとラッキー……そんなプレイ。
ジャッジは配信だと伝わりづらい空気感なんかも味わえて、人一倍観戦を楽しめますよ。
――それでは最後に、みなさんにメッセージをお願いします。
僕は長年ジャッジという立場からマジックに携わってきましたが、マジック界隈は確実に良い方向に変わり続けています。
それはみなさんがマジック文化を大切に思っているからであり、良くしようという努力を続けてきたからにほかなりません。
これからも晴れる屋のジャッジとして、みなさんの期待に応えつつ楽しく遊べる場所を増やしていきます。
この記事を読んで一緒にマジックを盛り上げたいと思った方はぜひ晴れる屋へご応募ください。
――ありがとうございました!
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